バリアフリーについては皆様もよくご存じかと思います。誰もが生活しやすいよう、その妨げになるような段差や障害物をできるだけ取り除く。これがバリアフリーの考え方です。
長く住みつづけることになる家は、「今」や「近い将来」だけを見て建てるのではなく、老後の暮らしのことも考えて建てることが大切です。今はなかなか想像できなくても、誰もが歳を重ね、体を思うように動かせなくなります。
この記事では、注文住宅でバリアフリーを実現するために押さえておきたいポイントを紹介しています。皆様の家づくりの参考にしていただければ幸いです。
バリアフリーを実現するためのポイント
バリアフリーは、障害を持つ方や高齢の方を想定した考え方かもしれませんが、「バリアがない」ということは、誰にとってもいいことです。その家に住むすべての人たちにやさしい家を実現するために、まずはどの場所にも共通するポイントを押さえておきましょう。
すべりにくくする
高齢になると、転倒したときにとっさの動きで受け身をとるような反射神経も衰えてしまいます。すべりやすい床はとても危険なので、「すべりにくい」家をつくることを目指しましょう。
段差をなくす
高齢になるとちょっとした段差につまずいてしまうことがあります。なるべくフラットにすることは、車椅子での移動を楽にするためにも重要です。
幅に余裕を持たせる
廊下にしても、扉の間口にしても、幅に余裕を持たせると介護用品を設置しやすくなりますし、車椅子での移動も楽になります。
手すりの設置
転倒防止対策として、道路からのアプローチ、玄関、階段を中心に手すりを設置しましょう。
家のスペース別バリアフリーのポイント
ここからは、家のスペース別にバリアフリーのポイントをご紹介します。
バスルーム
転倒がもっとも心配されるバスルーム。バスルームで考慮すべきポイントは3つあります。
濡れていてもすべりにくい床材を選ぶ
バスルームはとくにすべりやすいスペースです。つるつるした床材ではなく、水に濡れてもすべりにくい床材を選ぶようにしましょう。
段差をなくし間口を広くとる
高齢になると、浴槽の段差はより高く感じるようになるので、またぎやすい高さに設計しましょう。脱衣場とバスルームの高さをなくし、さらに間口を広くとると、車椅子の生活になっても入浴しやすくなります。
ヒートショック対策
冬場はバスルーム内外の温度差が大きくなるため、ヒートショックで命を落とす人が増えます。浴室暖房を設置するとヒートショックを防ぐことが可能です。
トイレ
トイレのバリアフリー化で注目すべきは広さと設置場所です。
なるべくスペースを広くとる
高齢になり体の自由がきかなくなってくると、せまいトイレで用を足すことも苦痛になります。そのため、最初からなるべくスペース、間口を広くとるとともに、バスルーム同様、段差をなくしすべりにくい床にするなどの対策を施しましょう。
寝室の近くに設置
高齢になると人間はトイレが近くなりがちです。夜間にトイレに起きることも多くなるので、トイレはできるかぎり寝室の近くに設置するのが理想的です。
洗面所
洗面台は老後に使用することを考えて、高さを重視して設計することをおすすめします。
洗面台は車椅子での使用を考えて設計
洗面台は、車椅子での使用を考えて設計するといいでしょう。大人の身長だとやや低いかもしれませんが、子どものいる家庭なら、子どもにとってはちょうどいいはずです。
さらに車椅子での使用を考慮するなら洗面台下の収納スペースをなくすという考え方もあります。
廊下・階段
廊下や階段のバリアフリー化で重要なのは、やはり「転倒防止策」です。
すべりにくくする
バスルームやトイレ同様、廊下や階段にはすべりにくい床材を使いましょう。
手すりの設置
手すりのない階段は健康な大人にとっても危険です。手すりは必ず設置しましょう。
照明の設置
階段は、設置場所によっては昼でも暗く、足もとが見づらいことがあるため、足もとを照らす照明の設置を検討しましょう。
廊下は幅を広く
廊下は車椅子の使用を考えて幅を広くとっておくといいでしょう。
玄関周辺のバリアフリーポイント
玄関も段差をなるべくなくすことが重要です。さらに道路から家への通路のことも考慮しましょう。
上がり框(あがりかまち)の高さを低めに
土間から家に上がる上がり框の高さは低めに設計しましょう。この高さが20cmを超えていると、高齢者にとってはまたぐことが難しい高さになります。
スロープや手すりを設置する
玄関はできるだけ段差をなくし、道路から玄関に至る通路も、手すりや車椅子の使用を想定してスロープの設置を検討します。
開口幅の広い扉を採用する
同様に車椅子の使用を想定すると開口幅の広い扉を採用するといいでしょう。90cm以上の幅を確保できれば理想的です。歳をとると、開き戸よりも引き戸のほうが出入りが楽になるので、引き戸の導入を検討してもいいでしょう。
まとめ
家は、家族の今や近い将来のことだけを考えるのではなく、老後のことも考えて設計する。この重要性をわかっていただけたかと思います。
ご紹介したいくつかのことは大きな出費をともないますし、土地や家の大きさには限りがありますので実現できないこともあるはずです。しかし、バリアフリーの考え方を取り入れるだけでも、住む人にやさしい家をつくることができます。
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